最高裁判所第一小法廷 昭和33年(オ)27号 判決 1959年7月02日
主文
原判決中主文第二項の部分を破棄し、名古屋高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人弁護士林武雄の上告理由第二点について。
原判決は、本件土地につき換地予定地の指定があつた以上従前の土地について分筆並びに所有権移転登記手続を求めること自体が無益であり、特段の主張立証がない限り訴の利益がないと言わざるを得ないと判示して、上告人(原告、被控訴人)の請求中第一次および第二次の請求を排斥し第三次の請求の一部を認容したことは、所論のとおりである。なるほどいわゆる換地予定地の指定があつたときは、従前の土地の所有者は、原則として換地予定地の上に使用収益権を取得すると共にその反面従前の土地について使用収益権を失うものである。しかし、従前の土地の所有者は、これがため本換地の指定がなされるまでは従前の土地の処分権を喪失するものではないから、従前の土地の全部又は一部を他に譲り渡しこれにつき移転登記をなすことを妨げる理由はない。果して然らば、換地予定地指定前既に従前の土地の全部又は一部につき所有権の譲渡がなされ、単に移転登記のみが未了の場合においては、換地予定地指定後該移転登記のみをなすことも可能であり、また、かかる移転登記手続を訴求する利益も存するものといわなければならない。然らば、本論旨はその理由あるものというべく、従つて、前示見解の下に上告人の第一次の請求を排斥し、第二次および第三次の請求につき判断を与えた原判決主文第二項の部分は、他の論旨に対する判断を与えるまでもなく、失当として破棄を免れない。よつて、民訴四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)